左右のスポークテンション差 その3
だいぶ前に左右のスポークテンション差その1、その2という記事を書きましたが、
その3ではちょいと補足をしてみたいと思います。
リアホイールの左右のスポークテンションが違う原因は、なんなのでしょうか。
根本的には右側にスプロケットが付いているせいで、
フランジ-センター間の距離が左側が長く右側が短いからですね。
いわゆるオチョコです。
このオチョコ量が大きいと左右のスポークテンション差が大きくなります。
なぜでしょうか。
ホイールが組みあがったときのスポークの張力を、フリー側がFr、
反フリー側がFlであったとします。
このとき、Fr、Flそれぞれのリムに対する水平方向の分力である
Fr´とFl´は同じ大きさになります。
ところがフリー側と反フリー側でスポークのブレース角(図の角α、角β)
が違うので、図のようにFrとFlの大きさが違ってくる、というわけです。
図のように反フリー側のブレース角βは、
反フリー側のフランジ-センター間の距離に強く影響されます。
赤いスポークより青いスポークのほうがブレース角βが小さくなります。
ところが水平分力Fl´は変わらないのでスポーク張力Flは青いほうが大きくなります。
反フリー側のフランジ-センター間が短いほど反フリー側のスポークテンションを
上げることができるので、左右差が小さくなります。
ではハブフランジのPCDが変わると(ラージフランジ、スモールフランジ)
どう変化するでしょうか。
図のように反フリー側のブレース角βは、
反フリー側のハブフランジのPCDにも影響されます。
赤いスポークより青いスポークのほうがブレース角βが小さくなります。
ところが水平分力Fl´は変わらないのでスポーク張力Flは青いほうが大きくなります。
反フリー側のPCDが小さいほど反フリー側のスポークテンションを上げることが
できるので、左右差が小さくなります。
角βが小さくなるほどスポークテンションの左右差は小さくなるのですが、
角βが小さくなるほど横剛性の確保が難しくなってきます。
フランジ-センター間の距離やPCDがいろんな寸法のハブがあるところを見ると、
この辺のバランスの取り方については、いろんな考え方があるんでしょうね~。
では、スポークの組み方(クロス数)でスポークテンションが変化するのは
なぜでしょうか。ラジアル組みとタンジェント組みで比べてみましょう。
赤いスポークがラジアル組み、青いスポークがタンジェント組みです。
後ろから見てみます。
赤いスポークより青いスポークのほうがブレース角βが小さくなります。
ところが水平分力Fl´は変わらないのでスポーク張力Flは青いほうが大きくなります。
反フリー側のスポークのクロス数が増えるほどスポークテンションを上げることが
できるので、左右差は小さくなります。
赤いスポークと青いスポークの張力の違いは、PCDが大きい(ラージフランジ)ほど
大きく(だいぶ変わる)、PCDが小さいほど小さくなります(あまり変わらん)。
反フリー側はスモールフランジでフランジ-センター間がある程度長く、
フリー側はものすごいラージフランジのハブでホイールを組めば、
テンションの左右差が非常に小さく、横剛性もしっかりしたホイールが
できるかもしれませんね。
ただ、ハブの重量やハブフランジの剛性、スポークとディレイラーが干渉するかも、
などいろいろと問題が出てきそうですが・・・
あと、フリー側のフランジが極端に大きいと、組むときに反フリー側のスポークが
スポークホールに通らなくなるかもしれませんね。う~む・・・