ペダルに踏力をかけたとき、スポークが伸びることにより、
リムに対してハブはどれくらい変位しているのでしょうか。
ペダルに踏力をかけたとき、もし変位θが大きいと、
それに伴いクランクも大きく動くことになり、
グニョ~とした(ビョ~ンかな)感じになるでしょうし、
逆に変位θが小さければ、かっちりした感じになるのではないでしょうか。
これをホイールのねじり剛性と呼ぶことにします。(横剛性や縦剛性は
とりあえず無視ということで…)
では、θを求めてみます。
ペダルに150kgfの力が加えられたときのF1によるスポーク張力の変化を
元にして、そのときのスポークの伸びを求めます。
スポークの伸びは、張力×スポーク長÷スポーク断面積÷ヤング率で
求められます。 ヤング率は200000(N/mm^2)ぐらいでしょうか。
スポークが伸びてL´の長さになったときのθの角度は
COS(α+θ)=(R^2+r^2-L´^2)/2Rrから求められます。
ペダル踏力150kgf、クランク長170mm、インナー×ロー=34×25、
ハブフランジのホールピッチ(PCD)45mm、ERD600mm、
15番スポーク(直径1.8mm)で計算してみました。ブレース角は考慮していません。
32H6本組みでθは約0.4°、フリー側と反フリー側の
スポーク張力の変化の違いで、もう少しθは大きくなるとして
0.5°(根拠はないですが…)変位したとします。
そのときペダルは何mm変位しているかを計算してみましょう。
0.5×25/34×170×2×π/360=1.09、約1mmになります。
実際はフレーム、BB、クランクなどの変形で、もう少しペダルの変位は
大きくなるでしょう。
150kgfで踏んだときのペダル変位1mmというのは大きいのか小さいのか、
硬いと感じるのか軟らかいと感じるのか…、2mmやったらどうなのか、
人によって違うのでしょうね。
32H2本組みだと約5倍の5mm変位することになります。
これはあかんやろ…。
ただこれは、インナー×ローでフルパワー時の話ですので、
ちょっと条件を変更してみます。
例えば、アウター×15で平地を巡航しているとします。
そこからフルパワーで加速したときのことを考えてみます。
ハブのトルク、スポーク張力の変化は15/25×34/50倍、
ハブの変位θも15/25×34/50倍で約0.2°、
ペダルの変位は0.2×15/50×170×2×π/360=0.18mm
になります。
う~んどうなんでしょうこの値は。
もちろんスポークの伸び以外の条件は考慮していませんので、
実際の値とはずれがあるのでしょうが…。
もしかしたらリムの剛性の違いでホイールのねじり剛性が大きく
変化しているかもしれませんし、ねじり剛性だけでなく、横剛性、縦剛性、
重量などもふくめて考えないと、加速が良いだの悪いだの、
かかりが良いだの悪いだの、足にくるだのこないだの、ホイールの性能に
関する評価はできないのでしょうね。
話は変わりますが、ホイールのねじり剛性は、スポークの張力変化(リムの
変形もかな)によるリムに対するハブの変位(回転方向)の大小である
ということなら、ねじり剛性はホイールを組むときのスポークテンションの
大きさには関係しないことになります。
例えば、50kgfのテンションで組まれたスポークに50kgfの張力増加が
あったときのスポークの伸びと、100kgfのテンションで組まれたスポークに
50kgfの張力増加があったときのスポークの伸びを考えます。
スポークの伸びは、張力増加分×スポーク長÷スポーク断面積÷ヤング率で
求められますので、どちらのスポークも50kgfの張力増加分だけ
伸びることになります。同じように伸びる、ということです。
同じように伸びるのなら、同じトルクをかけたときの、リムに対するハブの
変位(回転方向)も同じ、ということになります。
ということは、必要以上にテンションをあげても、ホイールの剛性アップには
つながらないということですね。
スポークテンションを上げると、スポークを2本まとめて握ったときに
硬く感じます。
それは硬く“感じる”のではなく、実際硬いのです。
では念のため計算してみましょう。
スポーク長の半分をL、Hだけ変位したときのスポーク長の半分をL´、
スポークの初期張力をF、Hだけ変位したときの張力をF´とすると、
F´=F+(L´―L)×ヤング率×断面積/L
そのときにスポークを押さえつける力は
F´×H/L´×2となります。(スポークの曲げ剛性は考慮していません)
はい、やっぱりスポークテンションが高いとスポークをたわませるのに
大きな力が必要だということになります。
これを利用しているのがスポークテンションメーターですね。
で、何が言いたいかというと、ホイールのスポークテンションを上げると、
テンションが低いときと比べて握ったときに硬く感じるので、
硬い=剛性が高いホイール、というふうに思ってしまうのでは、
ということなんです。そんな気しませんか?